ISAFが大きな決断をしました。2016年のリオデジャネイロ五輪からカイトセーリングを正式種目として採用すると発表しました。それはすなわち、ウインドサーフィン種目が外れることを意味します。
僕はカイトが入ることには賛成ですが、ウインドが外れることには反対です。
1984年のロスアンゼルス五輪から8大会、艇種を変えながら採用され続けてきたウインドサーフィン。アジア初のセーリング金メダルは1996年のアトランタ五輪で、ミストラル級女子のリー・ライシャン(香港)によってもたらされました。2004年のアテネ五輪ではミストラル級男子でイスラエルのガル・フリードマンが優勝。これはイスラエルにとって、全競技を通じて初の金メダルでした。他にも北京での中国初の金メダルなど、決してセーリング強国とは言えない国々がウインドサーフィンに活路を見いだし、素晴らしい成績を残しています。
セーリングの普及と促進の意味において、ウインドサーフィンが果たしてきた役割は計り知れません。なぜこれほど手軽に始められて、世界中に普及している競技が種目から外され、まったく普及していない種目が残り続けるのか。ウインドを外してまで470/49er、レーザー/フィンのように分けて存続する必要があるのか?甚だ疑問です。
まぁハッキリ言って、政治力の差なんでしょうね。やらしい話だけど。艇種問題はいつもそうです。たとえば先日から話題にしている新種目において、男女混合マルチハルはすんなりNacra 17に決まりましたが、女子スキフでは2度の投票の末にMackay FX (49er FX)に決まりました。その決選投票にRS-900と並んで29er XXも入ってたのには驚きましたね。29erサイドからの強いプッシュがあったことは想像に難くありません。もしこれで29er XXに決まってたらあのトライアルは何だったのかと・・・
こういうドロドロした世界って、セーリングから得られる爽快感や解放感とは対極ですよね。できれば関わりたくない。きっとウインド界にはそういう人たちが多くて、気づいたら外されちゃったのかな。勝手な推測だけど。
勝手ついでに言わせてもらえば、もう外されちゃったのは覆らないだろうし、ウインドでオリンピックを目指そうかとしていたセーラーはカイトにチャレンジするべきです。すでに国内ではプロ活動も行われているみたいだけど、ウインドの連中のフィジカルの強さと反射神経、スピード感覚をもってすれば、短期間で高いレベルまで上げられるんじゃないかと思います。
そもそもウインドはマストステップに画期的なユニバーサルジョイントを付けたことで、シートやティラーの不要なセーリングを手に入れた艇種です。カイトはそこからさらに進んでセールとハルを切り離しちゃった。そうすることでもっと自由に、もっと速くなった。セーリングの進化はセーラーには止められないし、止めるべきじゃありません。頭を柔軟にして考えれば、カイトもウインドも得られる爽快感は大きく違わないはずです。
北京五輪トルネード級の金メダリスト、スペインのフェルナンド・エチャバリは、トルネードが種目から外されてスター級に移りました。そしてちゃんとロンドン五輪のスペイン代表に選ばれています。トルネードからスターって、まるっっっっっっっきり別の競技といっても過言じゃありません。それを思えばウインドからカイトもきっと大丈夫。っていうか、もうポジティブにとらえるしかないっしょ。
JSAFはリオに向けて真剣にスキフを強化するべきですね。リオでウインドが外れ、もしもリオの後に470が外れるようなことがあったらと思うと・・・
[…] その時書いたように、一旦はカイトセーリングを鳴り物入りで採用したのですが、そんな決定はなかったことにして、ウインドサーフィン種目のRS:Xが復活採用となったのです。僕はウインドが外れるのは反対でしたが、カイトが入るのには賛成でした。本来この2種目は一つの枠を競いあうような種目ではないと思っています。 […]