単独武者修行記

カテゴリー SAILING

今年のモスワールドは3月にバミューダで開催されたのですが、凛子のOP選考会と日程がかぶったために参加しませんでした。2013年から続いていた連続参加が5年で途切れてしまい、次のパースワールドまでまだ1年半残っていることもあり、世界に取り残されてしまう焦りも感じ、他に参加できる大会がないかを探していたのです。今年のヨーロッパ選手権はスウェーデン開催。その前週にはUKナショナルが開かれるとあり、ロンドンにモスを運べば、レンタカーで効率的に2大会に参加できそうだと分かり、ここに照準を合わせました。日記形式で振り返ります。

7月9日、羽田から直行便でロンドン・ヒースローへ。モスをバゲッジとして預けるのも6回目となり、だいぶ手慣れてきました。ただしヒースローに到着してからは、予想以上に手間取ることになります。まず出国のゲートを物理的に通れないw 裏口を開けてもらうのに1時間以上待たされ、ようやく出国したはいいけど、レンタカーの事務所に向かうバスにもモスが載りません。ということは借りてくるまでモスを誰かに預けなければいけない。これにまた1時間以上かかり、ようやくレンタカー屋へ。すると今度は予約していた車と違ってルーフレールが無い。この車ではダメだ、別のにしてくれというと料金が跳ね上がると言われ、また1時間以上の交渉。しぶしぶ条件を飲まされ、ヒースローに戻ると駐車場は立体で、モスを持って上がれそうもない。また交渉して1階のスペースに停めさせてもらい、持参したルーフバーを縛りつけ、ひとりでカートップを完了したのは、ヒースロー到着から5時間後でした・・・

7月10日、UKナショナルの舞台ソープベイヨットクラブに到着。ここの海は干満差が尋常ではなく、満潮前後の4時間程しかセーリングできません。午前中でモスを組み上げて午後から出艇しますが、既に潮がだいぶ引いていて、海面におびただしい量の藻が浮いています。これがフォイルに絡みついてまったく飛べません。なんだここ?その後すぐに潮が引き、さっきまで練習していた海面はみるみる陸地に変わっていきました。

7月11日、レース初日。第1レースのスタート1分前に、ジャイブで「バン」と大きな音がしてバウ沈。見るとバングの根元のループが切れています。これではレースにならないので、リタイアして沖で修復を試みましたが、何度結び直しても少しバングを引くだけで滑って抜けてしまい、なかなか修復できません。仕方なく一度陸に上がり、結び目をプライヤーでガンガンに締めて再出艇。でもスタートして本気でバング引いたらまたズルッ。あーもー!結局3レースとも参加できないまま初日を終えてしまいました。頭に来たので、何があっても絶対に抜けないようがっつりスプライスし直して捲土重来を期します。

7月12日、今度はハイトアジャスターがズレてラインがジャムってしまい、飛べない状態で固定されてしまいました。これを直してる間に第4レースがスタート。後ろから追い上げるもたいして上がれず。第5レースは潮が引いてきたせいで、1分走るごとに藻を取らないとフォイリングできない、未体験レベルの藻取りレース。フォイリングしてようがしてまいが、容赦なく絡みつく藻、藻、藻。これには選手もみなお手上げでした。そして潮が引きタイムオーバー。いくらいい風吹いてても、水がなければセーリングはできません。なんでこんなところでわざわざ大会やるのさ・・・

7月13日、満潮が少しずつ遅い時間にずれてきたため、シーブリーズとタイミングがあってきて、ようやく文句ないコンディションで3レースできました。やっぱりみんな速い!スタートで飛び出しても1分後には集団に吸収され、ズルズルとトップ10から弾き出されてしまいます。僕が持ってきたのはスモールフォイルなので、ダウンウインドは周りより速いのですが、2上でまた順位を落とし、結局3レースとも10番台。悔しいけど、このあたりが実力のようです。

7月14日、大会ベストの風が最終日に吹きました。ようやくスモールフォイルでも戦える16-8ノットの風が吹き、最後の最後にシングルの7位を取って大会終了。日本国内では無敵の角度とスピードを持っていると自負し、意気揚々とやって来たのですが、さすが世界最高の呼び声高いイギリスフリートはレベルが高い!わざわざ来た甲斐があったと逆に喜ばないといけません。この差を埋めるための何かを見つけて帰らなきゃ。

7月15日、ユーロトンネルでフランスに渡り、ベルギー、オランダと北上している間にワールドカップの決勝、フランス対クロアチアが始まりました。どこかSAにテレビが無いかと探したけど、意外にありません。仕方なくラジオをつけたら当然オランダ語。何言ってるか全然分からないけど、とりあえずどっちがゴールしたかだけは何となく分かりますw 雰囲気だけ味わいながら、なんとかブレーメンまでたどり着いて投宿。

7月16日、早朝から走ってデンマークを越え、人生初のスウェーデンへ。目的地ランツクルーナに到着し、夕方には艤装も終えて準備万端。

7月17日、朝から風が弱く、ボートパークを回遊しているときに、一人のフィンランド人が寄ってきて、オレのフォイルを見てみろよと誘われました。これが信じられないくらいよくできてる。Mach2のストラットに差し込めるホリゾンタルなんですが、ハイアスペクトでアンヒードラル。しかもトップサーフェスが繋がっているのにヒンジが動くという魔法のようなフォイルです。こういう出会いがあるから遠征って面白い!モニターを募集してるというから、夕方から吹いてきた風で借りて使ってみたんですが、走りも素晴らしいじゃないですか。これ、明日からのレースでも借りていいかな?

7月18日、というわけで、レース前日に他人のフォイルを借りて8-6-8とシングル連発しちゃいました。やっぱりこのフォイルいいな。微風の飛びもいいし、吹き上がってきても高さが取りやすい。フリーもそんなに悪くないし。このままずっと借りちゃおう。

7月19日、この日も走りは決して悪くなかったのですが、またも最大の敵は藻です。毎レグごとに3-4回沈させて藻を取らないと走れません。ホント勘弁して欲しい。こんなのヨットレースでもなんでもない、単なる地雷原レースじゃないかと。もちろん条件はみな同じとはいえ、海面からちょっと沈んで見えない藻を避けることなんてできませんから。単なる運なんですよね。大会の開催地を決める大きな要素として、藻を考慮して欲しい。本気でそう願います。

7月20日、微風のマージナルなコンディションでも、このフィンランドフォイルはよく飛ぶ!途中ダントツを走ったときもあったんですけど、またまた藻ですよ藻。2レース目は藻で撃沈。3レース目は借り物フォイルのバレルナットを壊してしまいリタイア。4レース目は自分のスモールフォイルで良く走ったんですが、着岸の際に浅瀬に当たってストラットを折るという、もう泣きっ面に蜂の一日でした・・・

7月21日、フィンランドフォイルを修理して絶好調。もう返す気もなくなってきました。序盤2レースは良く走りましたが、なぜか後半失速。この日は藻も少なかったので、何が原因だったのかはよく分かりません。セッティングをもっと精査しないと安定したスピードを出すのは難しいようです。速いときは速いけど、そうでもないときとの差がまだ大きい。ま、借り物だし当たり前っちゃ当たり前なんだけどw

7月22日、残念ながらフォイリングする風が続かず、ノーレースでレガッタ終了。総合9位で小さなカップを貰いました。ボートスピードからすればもっと上に行けたはずですが、トラブルや藻に阻まれて、なかなか思うようにはいかなかったなと。トップ5艇とはまだスピードに開きがあるのも厳然とした事実です。どこに手を加えてその差を埋めていくのか。日本に帰ってまた改造と練習の日々が必要なようです。

最後の夜は思う存分みんなと酒を酌み交わし、23日は朝から晩まで走り続け、24日午後の飛行機で日本に帰りました。たったひとりで2週間の濃密な単独武者修行。その成果は、ここからの飛躍によってこそ証明しなければなりません。おう、のぞむところだぜ。

コメント

コメント(4) “単独武者修行記”

  1. umihiko

    うらやましすぎるっ
    また武者修行にいきたいなー

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  2. ゆう

    絶筆宣言は知っているけど、ここまで投稿がないと、寂しいなぁ・・・

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  3. Ken Matsumoto

    実は私は、もう半世紀程前に、初めてWindsurferの試作品がマリーナ・デル・レイにあるUCLAのセーリング部に持って来られた時に、最初に試乗した者です。 当時のものは今の二倍程の大きさと重さの有るもので、私の様な小柄な日本人にはブームが頭の上に有り、ぶら下がって運転しなければなりませんでした。 でも、幸い私はマリーナ・デル・レイの幅一杯を往復して一度も海に落ちた事も無くデッキに戻る事に成功しました。 それ以来、ウィンドサーフィンに夢中になり、最初のWindsuferの品を購入し、一人で外海の試乗にも挑戦し、成功裏に戻って来ました。 UCLAを卒業してからは大学の仕事が忙しくなり、サーフィンをしている暇が無くなりましたが、それでも夏休みなどには、カテリーナ島まで往復した事もありました。 日本に帰京した時は、琵琶湖でウインドサーフィンを始めた同級生達のサーフィンを借りて、彼らのヨットと競争していつも私が買って居ました。 今は70歳を超えたので、若い友人に譲りました。 実はその気になれば今でも乗れると想いますが、無理をしない様にと言う友人達の忠告に従う事に為りました。  

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