As time goes by

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マイアミで今年もISAFワールドカップイベントであるOCR(オリンピッククラスレガッタ)が開かれています。成績を見ていて驚いたのが、470のエントリーの少なさと、49erFXやナクラ17のエントリーの多さ。470女子なんて10艇しか出ていませんが、FXが34艇でナクラは31艇。もともとアメリカで470に乗っている選手が少ない背景はあるにせよ、3倍以上の開きが出るとはビックリしました。

470からFXやナクラに人材が流れたという見方もできるでしょう。実際にFXでトップを走っているイタリアのジュリア・コンティも470からの転向組だし。ブラジルの英雄、トーベン・グラエルの娘マルティネも470からFXに乗り換えて頑張っています。今後もおそらくスキフやマルチハルの人気が高まる流れは強まるでしょう。

セーリング界はいま大きな転換期を迎えています。セーリング関係の情報サイトを巡回しても、目に飛び込んでくるのはスキフ、マルチハル、フォイラーの記事ばかり。ここ数年のセーリング界の変化の大きさは、少なくとも僕の25年のセーリングキャリアの中では最も劇的だと感じます。

このトレンドの源流は、やはりアメリカスカップです。AC45のサーキットで熱くなり、AC72が40ノットで飛び回る映像を見せられたらもう、これまでのセーリングがすべて退屈に感じてしまいます。それほどの大きなインパクトでした。

でもこの変化には前段があります。2010年の第33回アメリカスカップ。全長・全幅とも90フィートという化け物のようなトリマランを駆るBMWオラクルと、カップ防衛のためにスーパーカタマランを作ったアリンギ。あの戦いがなければ、マルチハルやウイングセールがこれほど注目を集めることもなかったでしょう。

さらにもっと元をたどれば、2008年の北京五輪を最後に、オリンピックからトルネードが外されたことが引き金になったとも言えます。ローマン・ハガラやミッチー・ブース、ダレン・バンドックなどのタレントが活躍の場を失ってしまいました。また選手だけでなく、フネやセールを作っていた人たちにも大きな打撃を与え、彼らはマルチハル復権の思いをこめ、エクストリーム40というクラスを作ってサーキットを始めました。このエクストリーム40というフネを作っているビルダーは、トルネードで市場を独占していたスウェーデンのマーストロムというビルダーなのです。

extreme40このエクストリーム40、ハッキリ言って設計ミスの失敗デザインでした。だって単にトルネードを大きくしただけですから。でも皮肉なことに、それが良かったんです。ピッチポールが相次いで、とても刺激的な映像がたくさん撮れたからです。ぶつかったり、沈してクルーが落っこちたり、マストを折ったり・・・そういう刺激的な映像がYouTubeやケーブルテレビを通してガンガン流れました。

おお、やっぱりカタマランって観てて面白いなと再認識した頃にオラクル対アリンギのマッチがあり、その後オリンピックにも男女混合クラスとしてマルチハルが戻ってくることになったのです。まさに怪我の功名ですね。一度オリンピッククラスから外されたことが、結果としていまのマルチハル隆盛につながったんですから。

モノハルでもスピードボートがどんどん増えて、ジェネカーやリーチャーが主流になり、レーシングボートから対称スピンは完全に消え去りました。フネが速くなればなるほど見かけの風が前に回るからです。スピンポールはもう、過去の遺物といっても過言ではありません。おそらく10年後か20年後かに振り返った時、ヨット界が大きく変化した時期として記憶されるべき年代がまさにいまなんだと思います。

我が国は、やっとFJから420に変わらんとする今日この頃ですが、本当は420と同じくらい29erが増えないと。あと若い頃からマルチハルに乗る機会も欲しいですね。420も470も素晴らしいフネなのは間違いないけど、他の選択肢があまりに少なすぎると思います。もっと楽しいフネがたくさんあるのにな。世界の流れにうまく乗って、もっと速いフネが増えてくれたらうれしいな。

コメント

コメント(3) “As time goes by”

  1. tsuntsun

    確かに世界の主流はパフォーマンスボートへ移行しつつありますね。

    日本にはまだスキフへのステップアップカリキュラムが充実していないのが事実、これからは更なる感覚を研く必要があるでしょう。

    ヨーロッパではジュニア用スキフのOpen-Bicが幅広く活用されております。
    スキフの入門艇、大人が乗っても面白いですよ!

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    • hiroki

      子供たちに、いつかあれに乗りたいという憧れを持たせるフネが増えて欲しいです。オープンビックも楽しそうでいいですね。

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  2. […] 以前も書きましたが、2010年の33回アメリカスカップがいまのセーリング界に与えた影響は絶大でした。あのAC90が無ければ、当然のちのAC72もAC50も無い訳で。特に2012年からマルチハル+ウイングセールにハイドロフォイルが加わったことで、進化のスピードが一気に加速しました。 […]

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