高校生のダブルハンド種目としてJSAFが新たに採用を推し進めている420ですが、いったいどんなフネなのか、国内ではほとんど知られていません。470の弟分と見られがちな420ですが、むしろ逆で420の方が4年ほど歴史が古いのです。

420が設計されたのは1959年のフランス。はじめからユース向けだった訳ではなく、誰にでも乗りやすく、安価な2人乗りのボートとして、当時の最新のデザインとセールプランを取り入れて設計されたようです(その時点ではトラピーズはありませんでした)。フランスを中心に瞬く間に世界に広まった420をベースに、後のオリンピック艇種となる470が生まれました。

そのクラスルールは当時の思想を引き継ぎ、徹底して保守的です。第1章のA節にはこうあります。

A.1 一般事項

A1.1 国際 420 クラスルールは、クラス限定ルールである。

A1.2 420 はワンデザインクラスである。当ルールは、乗艇者が互いに平等な条件のもとに競技ができることを目的とし、競技に影響する艇の性能を、可能な限り平等ならしめるものである。

つまりボートの性能を高めることよりも、公平性を優先するよと。乗り手の腕でカバーしなさいよというクラスです。だから470ではあって当たり前のものが420にはことごとくありません。

  • ジブリーダーが無い  ジブのリーチは反対側のジブシートを突っ張ってコントロールします
  • ツイーカーが無い  ガイはチェーンプレートの根元にあるフックにかけます
  • スターンにスピンブロックが無い スピンのターニングはミジップの1個だけです
  • スピンハリにブロックが無い スピンハリはテークルがNGなのでダイレクトです
  • デッキ上にカムが無い バングもカニンガムもセンターケースでクラムクリートのみ

これほど艤装品が徹底して省かれているので、新艇が届いたら2-3時間後には進水することができます。カムクリートが許されるのはメインとジブとスピンハリの4つのみで、あとはすべてクラムクリートです。ロープの本数もブロックの個数もFJとは比べ物にならないほど少ない。また、バングやカニンガムは中に入らないと引けないので、ヘルムスマンは基本的に、ティラーとメインシートだけでフネを走らせることになります。

そして420最大の魅力が、この大きなセンターボードです。FJよりもはるかに安定したバランスと、ヒールを起こしたときの加速を与えてくれます。強風下のパフォーマンスが非常に高く、特に20ノットオーバーのクローズは470と遜色ありません。適正体重は120キロくらいとFJよりも重いので、食べ盛りの高校生にダイエットを強いるようなこともないでしょう。

420は長くISAFユースワールドの採用艇種で、420ワールドとISAFユースワールドが毎年どちらも非常に盛大に行われています。近年、日本人選手の活躍も目立っていて、2006年ユースワールドで齋藤/吉永組が銀メダルを獲得しました。そして2011年にも元津/日野組が同じく銀メダルを獲得したのは記憶に新しいところです。

弊社は2005年の創業当初から420の販売を続けています。長崎工業の村濱/原田組に納めたSZ420の国内1号艇が、レース当日の朝に進水という状況ながら、第1レースでいきなりトップフィニッシュしてくれたのは鮮烈でした。このSZ420はその後、全日本を3連覇することになります。

2006年のアジア大会では、福岡の飯束/古谷組と浜名湖の高橋/津ヶ谷組がSZ420で銀メダルを獲得してくれました。また、2007年の秋田国体では、弊社テントにあえて国体種目でない420を展示。いかにシンプルでいいフネか見てもらい、多くの反響を得ました。

その後、SZ社と製造部門のSSCが分離してしまい、取扱ブランドがSSCのブルーブルーに変わるのですが、このブルーブルー420は葉山の角田/古屋組が2010年の全日本で優勝(女子の部)。そして2011年には江の島の新谷/馬渡組が優勝し、角田組とワンツーフィニッシュを飾りました。どちらも女子チームでありながら、男子を含んだ総合でのワンツーだから大したものです。

420のクラスルールは先述のように、最大限の公平性を担保しようと務めているのですが、現実的にはビルダー間でボートの剛性に大きな隔たりがあるのも事実です。速さだけでなく、長く性能を保つ意味でも剛性の高さは非常に重要です。420への期待が高まっているいまだからこそ、質の高い、正しい情報を発信していこうと思います。

5月には一気に8艇入荷予定。(6艇は売約済み)今年は420も忙しくなりそうです。

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