モスのように風よりも早く走るヨットでは、それまでの常識が通用しないことが多々あります。頭では理屈を理解しても、身体に染みついた習慣が抜けないので、イメージ通りに動けないのです。
頑張ってハイクアウトして、メインシートはできるだけ引いて起こすというヨットの常識を捨てないとモスでは絶対に飛べません。モスではメインを出してアンヒールさせないと飛べないのですが、これができない人が多い。
もっと強烈なのがジャイブです。この写真を見てください。どうなってるか分かりますか?
モスはダウンウインドでも風が前から吹いているので、ジャイブのためにベアを始めたら、その瞬間にアンヒールが来ます。ベアする前に体重移動を始めないと間に合わずに沈するんです。確実に沈します。だからブームが返る前に下デッキに行く必要があるんですね。
でも、シングルハンドなのに、ブームが下にあるうちから下デッキに行くのって、メチャクチャ勇気がいるんです。常識が邪魔をしてカラダが動かない!そして何度も何度も何度も何度も沈をする。ビビって手が震えるとフネも震える!
僕は初めて乗った時、飛ぶのは全然苦労しなかったんですけど、ジャイブには苦労しました。3日間ひたすら沈をしまくり、ブームパンチで顎が外れたりしながら、なんとかフォイルジャイブを成功した時の興奮は忘れられません。でも世の中には可愛くないヤツもいるもので、かのネイサン・アウタリッジはモスに乗って初めてのジャイブからフォイルジャイブだったそうです。お前には常識がないのかよ!