セーリングは進化するスポーツです。ルールに則って戦うのは当然ですが、ルールの解釈の仕方が変わったり、ルール自体が変わることもあり、その変化に合わせて乗り方も進化する必要があります。我々が既成概念にとらわれている間に、世界ではあっと驚くテクニックを磨いている選手がいるんです。

470級のクラスルールでは、パンピングフラッグと呼ばれる旗が揚がると、パンピングやロッキングといった推進方法違反とされるアクションが解禁されます。2008年の改定でその下限風速が10ノットから8ノットに下がりました。

この変化に最初に目をつけたのが、イギリスの若手コンビ、ルーク・ペイシャンス/スチュアート・ビーテルでした。ルーク曰く、10ノットと8ノットではパンピングの効果に絶大な差がある。10ノット以上ではバングを引くし、メインシートを逃がし始めるけど、8ノットでは違う。リーチをタイトに締めて、ウインドサーフィンのように思いっきりファンすることで大きなパワーが得られる。そのパワーはバウダウンすればスピードに変わるし、逆に角度に変えて上のフネを簡単に上り殺すこともできるんだ、と。

彼らは実際、コンビを組んでわずか2週間で、470世界選手権で準優勝し周囲をアッと言わせたのです。そしてご存知の通り、ロンドンオリンピックの母国代表に選ばれ、見事銀メダルを獲得しました。

百聞は一見に如かず。パース2011のメダルレース映像です。

僕らも実際にパースやウェイマスでメダルレースを見ましたが、ボディーパンプしているフネは明らかに周りのフネに対してゲインしていました。つまり、今後はこのテクニックを身につけないと勝てないということです。マストやセールのデザインまでこのテクニックによって変わったと言っています。彼らのインタビュー記事が載っているシーホース誌の2012年7月号は、今後470でオリンピックを目指そうかという選手は必読です。(ちなみにこの記事で彼らは「シャギング」と呼んでいますが、あまりいい意味ではないので広めるのは辞めましょう・・・)

すげーなーと思っちゃダメですよ。同じ470なんだから、同じルールなんだから。全日本だろうがインカレだろうが、パンピングフラッグが上がったらガンガンに揺するべきです。最初はやってもあまり効果がないかも知れないけど、やらないと絶対にテクニックは身につきません。彼らの更に上を行く、効果的なボディーパンプの方法だって見つかるかも知れないし。

そのヒントとなるのが次の映像です。

先週ガルーダ湖で開かれていた49erのヨーロッパ選手権では、準優勝したデンマークの選手が究極のダブルトラピーズで話題をさらったそうです。違反ではないか?と抗議されたけど、審問の結果は却下。現時点のクラスルールでは合法とみなされました。ロンドンの銅メダリストでもあるヘルムスマンのアランは、「このテクニックは15-20ノットの安定したコンディションで効果を発揮する。特にここガルーダは最適なんだ。」とコメント。

実際映像を見ていると、ヘルムスがクルーの肩に乗った時から明らかに加速しているのが分かります。ルールで禁止されない限りは、今後はこれがスタンダードなテクニックになるでしょう。

どういうことか分かりますか?

今後はSSや470でもヘルムスマンの肩に乗るクルーが出てくるということです。絶対にその方がヒール起きるんだから。470のヘルムスマンは今後クルーに肩に乗られると覚悟してください。肩に乗ってボディーパンプされたらヘルムスマンはたまりませんね。肩と首と腰をよっぽど鍛えないと。あー現役の時にやりたかった。

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