最近オリンピックキャンペーンを始めたいという相談をよく受けます。そういう時期なんでしょうね。昨日もある選手とそんな話をしました。オリンピックを目指すというと聞こえは良いけど、お金の面でも時間の面でも膨大な犠牲を払う覚悟が必要なので、深く考えれば考えるほど不安が大きくなる気持ちも分かります。
逆に分からないのが、キャンペーンできる環境が見つかればやりたいというパターン。最初からそんな環境ある訳ないって。仕事もせずにヨットの練習するだけで給料もらえて、遠征にも行けて、道具は全部支給されて。そんな夢のような話はありえないと思った方がいい。
オリンピックキャンペーンって、オリンピックに出るための手段なはずなのに、ともすればそれが目的になってしまいます。環境を作る事が大事なんじゃなく、どんな環境でも上手くなりたい、速くなりたい、負けたくない、そのほとばしる思いが先にないと、環境に見合う結果は残せないんじゃないかな。
僕も実業団で470をやってた時期があります。ナショナルチームに入って海外遠征にも行かせてもらって。いま振り返れば、そういう自分に酔ってたなと思います。でも世界の舞台に出たら、そんな肩書きや環境なんて誰も気に留めません。普通にそのへんの高校生に負けたりしてホント凹みます。速いか遅いか、それだけの世界ですから。
肩書きを捨てて個人として世界に挑んでみたくなり、会社を辞めて5年間、ヨットだけの生活をしました。何かを得るには何かを捨てる覚悟がいる、そこまで賭けた人間じゃないと辿り着けない所があると信じていたからです。最終的にオリンピック代表を逃しましたが、全身全霊で世界に挑んだことには一切悔いありません。
これからオリンピックを、世界を目指そうという若いセーラーのみなさん。同じ夢を持っている競争相手が世界中にたくさんいることを忘れないでください。挑戦できるチャンスは人生でそう何度も巡ってきません。夢を叶えられるのは、一番強く願った人だけです。