180マイルのロングレースでは、何よりも戦略が大事です。ここ数年、遠州灘で岸に寄せ苦杯を舐めてきた我々ラッキーレディーの今年の戦略はズバリ沖出し。ラムラインなど目もくれず、ひたすら南に下るというプランを立てました。
スタートはブリリアントでした。下有利のピンエンドを奪い、数分伸ばしてヘダーでタック!全艇前切り!爽快な景色に笑みがこぼれます。
その後、数回の振れタックでさらにゲインし、最初のウェイポイントである神ノ島までは完璧な展開でした。例年ならジェネカーを張ってラムラインを基準に東進するところを、今年はコードゼロで徐々に南に出しながら利島を目指します。
夕闇が迫る頃には、低く黒い雲が後ろから近づき、ヒュッと肌寒い風が入った直後に一気に風向と風速が変わりました。前線通過です。急遽スピンに張替え、振れジャイブしながらプラン通りのコースを守ります。今回はなかなか落ち着いたいいナビゲーションです。
この前線通過を境に大気の状態が不安定になり、絶えずゴロゴロと雷鳴が轟く夜でした。聞けばこの夜、首都圏は豪雨に見舞われたそうですが、海上では雨こそ降らないものの、時折急激な風の変化が起き、何度となくセールチェンジを強いられました。あんなに長く雷が光り続けたのは初めての経験です。ずっと稲妻に向かって走り続けた夜でした。