スコーの逆襲

カテゴリー SAILING

ミニトランサットというレースをご存じですか?フランスからブラジルまで4,000マイル以上を走る、大西洋横断シングルハンドの冒険レースです。2年に1度開催されていて、冒険好きのフランスではスタートが生中継されるほど人気があります。

使われるフネはトランサット6.50というオープンクラス。全長6.5メートル、全幅3メートル、喫水2メートルなどの諸元を満たしていれば、モスのように自由に設計できます。弊社が今年から国内販売を開始するシースケープ18は、このトランサット6.50のデザインをベースに作られたフネです。全長の短さをカバーするバウスプリット、幅広のトランサムにツインラダーなど、シングルハンドでも荒海を速く安全に走れる工夫が随所に施されています。

直近では2011年の9月25日にフランス西岸のシャラント・マリティームから大会がスタートし、途中ポルトガル沖のマデイラ島でストップオーバーの後、10月30日にブラジルのバイーアに先頭艇がフィニッシュしました。マデイラ島からの第2レグを制し、大会総合でも優勝に輝いたのは、Teamwork Evolution号に乗るデーヴィッド・ライソン。そしてこのEvolution号はなんと、昔懐かしいスコーだったのです。

スコーってなに?という方もいらっしゃるでしょう。モスがまだ飛んでなかった時代。エイのように平べったいスコー船形と、鉛筆のように細長いスキフ船形のどっちが速いのか、長い長い戦いがありました。スキフはバランスが難しく、曲芸のようなテクニックが必要だったのに比べ、スコーは安定して乗りやすく、特にフリーが速いのが特徴でした。いや、だったそうです。どっちも乗ったことないから耳学問です。スコーは徐々にスキフに駆逐されていき、フォイラー全盛の時代になってからは、スコーはほぼ死滅していました。ノスタルジーを求める爺さんのものだったのです。

しかしそんなスコーがミニトランサットの優勝で再び脚光を浴びています。なにせこのスコー、メチャクチャ速かった。それまでのレグ最短記録を23分更新しただけでなく、2位を丸一日以上、120マイル以上の差をつけてフィニッシュしたのです。これは30年を超えるミニトランサットの歴史で、最もダントツだったそうです。

ライソンは優勝インタビューで、「フネが速すぎて、むしろスピードを抑えながら走った時もあった」と答えています。ブイ周りと違って、時として何日も同じタックを走るロングオフショアレースでは、スコーのフリーの速さがクローズのデメリットを上回ることもあると実証されたのです。えらいこっちゃ!いま世界中のヨットデザイナーが解析しまくって、このスコーのメリットがどこまで広がるのかを研究しているでしょう。

フリーばっかりのロングオフショア?どっかで聞いたことありませんか?そう、トランスパックです。ロサンゼルスからハワイまでの2,200マイルあまりを貿易風に乗ってかっ飛ぶトランスパックこそ、スコーにうってつけなんじゃないか?当然そう考える人が出てくるわけです。

すでにライケル/ピュー設計事務所が次回トランスパックに向けて90フィートマキシのスコーデザインを発表しました。Evolution号が備えていたローテーションバウスプリットも採用されています。楽しみですねー、90フィートのスコー。これも圧勝しちゃったら、一気にスコーが主流になるかも知れませんよ。

モスもフォイラーのスコーが出たら、まさに空飛ぶじゅうたんみたいでしょうね。Mach3はスコーか?

コメント

コメント(1) “スコーの逆襲”

  1. […] 桟橋にはIMOCA60やクラス40、フィガロ、ミニ6.5などが所狭しと並んでいます。なかには先日女性クルーの参加を発表したばかりのボルボ65、東風も係留してあるし、かつて紹介した、スコータイプのミニ6.5を中古で手に入れて改造し、フルフォイリングで世界を驚かせたSEAirもここにある。なんだ、僕がいつもネットで追いかけてる情報の発信地はほとんどここじゃないかと。そのくらいこの田舎町はヨットとセーラーで溢れ返っています。これまで世界中のセーリングタウンを訪れましたが、規模の大きさではここがナンバーワンかも知れません。 […]

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