社会人2年目の98年に、ボーナス払いで買ったボンダイブルーのiMac。それ以来ずっとMac一筋で、愛するアップルへのお布施を続けてきました。去年の国体から帰る道中にジョブズが亡くなった事を知った時には、あまりの衝撃にサービスエリアで30分動けなくなるほどでした。
iPhone、iPod、iPad、MacBook Air、iMac、家じゅうに林檎マークがゴロゴロしています。数えたらMacだけで7台。iPodにいたっては何台あるのやら自分たちでも把握していません。どんなにマイノリティーだと虐げられても、変人だと後ろ指を指されても、Macを使い続けてきました。僕にはこれしか欲しいと思えなかったから。
いまや時価総額世界一の企業になったアップルの強みについては、多くのビジネス書で語られています。確かにビジネスの点でも特筆すべき企業だとは思いますが、僕にとってアップル最大の魅力は、ここまでするか?と、あきれるほどの商品の作り込みです。ときに採算を度外視しても、究極の理想を追い求める姿勢に心打たれます。
Macユーザーはご存じかと思いますが、アップルのノートPCのボディーは、アルミの削り出しです。ムクのアルミをNCマシンにセットし、削って、磨いて、複雑な3次元パーツに仕上げています。多くのパーツの寄せ集めでなく、1つのパーツなので、軽いのにとても剛性が高いのです。
削り出しが優れているのは他メーカーも分かっています。でも普通やりません。大量生産する商品でこんな作り方、まったく常識に反しています。普通は大量生産するための金型を削り出して作ります。その金型に樹脂や金属を流し込み、大量生産するのです。いったい何台のNCマシンと、何人の従業員を使って生産しているのか。莫大なコストがかかっているはずです。
しかもアップルは、なにげない他のパーツでも手を抜いたりしません。下の動画は、僕も愛用しているアップルTVという商品のリモコンをバラした模様ですが、これもどう考えても削り出してるとしか思えない。入り口よりも中の空洞が大きいので、MacBookのユニボディーよりもむしろ手が込んでいます。どうやって作ってるのかも分からないし、もっと分からないのは、なんで8,800円の商品に付属するリモコンにここまでできるのか。リモコン単体で買ったら1,980円ですよ。これ絶対に赤字でしょ。
効率や採算を重視する日本企業では、まず企画の段階で通らないし、もし規格が通って実際に作ったとしたら、価格が跳ね上がるでしょう。時価総額世界一の企業だからこその余力なのか。もしくは、ここまでする企業だから世界一になったのか。
ジョブズはきっと、うへぇっと唸っている僕を見て、草葉の陰で喜んでいることでしょう。彼は自分たちが売る商品にとことん向き合い、こだわり、突き詰め、ユーザーがどうすれば喜んでくれるか、そればっかりを考えてたそうです。たかがリモコン、されどリモコン。とても大切なことを教えてくれている気がします。