okinawaJSAFの広報サイト、J-sailingに先日の沖縄アカデミーのレポートが掲載されました。自分の書いた文章なので、もう引用してネタにしても許されるでしょう。

レポートにも書きましたが、これまで北海道から沖縄まで、文字通り津々浦々でアカデミーを開催してきました。そこで指導者の方々に毎回お願いしているのは、「答え」を教えないようにして欲しいということです。

クローズで上り過ぎて止まっている選手がいたとして、指導の仕方には多くのバリエーションがあります。たとえば以下の3パターン。

  1. ティラーを引こう
  2. テルテールを流そう
  3. スピードが落ちてるんじゃないか?

この中で最も確実で簡単なのは1番です。一瞬で伝わるので、すぐにスピードも回復するし、教える側としては悪気もなくこういう指導をしがちだと思います。でも気をつけないといけないのは、選手の考える機会を奪っているということ。

上り過ぎたフネに対してティラーを引けというのは、「答え」なんです。答えを教えられたら自分で考えるクセが身につきません。たとえば2番のように言い換えることで、選手はテルテールを流すにはティラーを押すのか?引くのか?と考えることになります。

もっと答えから遠ざけて3番のように伝えれば、スピードが落ちてる理由はセールトリムなのか?バランスなのか?など他の選択肢も考えて、自分なりの答えを出すようになります。大事なのはここで、選手の出した答えが正解ならば正解と伝えてやること。間違っていれば、そうじゃないと伝えて、できるだけ自力で答えにたどりつけるように仕向けることです。

時間はかかるかも知れないけど、こうして自分たちで考えさせたことは身につきやすいので、結果として上達を早めることにつながります。なによりその方が楽しいですからね。海の上の時間が楽しくなれば、自主的に考えて練習するようになり、結果が出ればさらに楽しくなるという循環ができあがります。

もちろん例外もあるでしょう。受け取る選手の習熟度によって、上記のパターンを使い分ける必要があるし、安全に関わる場面では優先順位も変わります。

でもね、思うんですよ。僕はこの28年間どうしてセーリングに夢中なのかって、答え探しが楽しいからなんですよ。どうすれば速くなるのか、上手くなるのか、答えは雑誌にもインターネットにも載っていません。もちろん雑誌もインターネットも読みますよ。でもなかなかズバリの答えには出会えない。それでいいんです。だから楽しいんです。

陸の上でも、それこそ風呂の中でもベッドの上でも答えを考えて、出た自分なりの答えを確かめに海に出ていく。ずっとその繰り返しです。このサイクルができあがると、ほっといても勝手に上手くなっていきます。

全国の指導者の方々、どうか答えは選手たちに考えさせてあげてください。練習のあとのミーティングも一方通行に話さないで、選手たちに答えを出させてやってください。どんなに指導者が長々と思いの丈を話しても、選手たちはすぐ忘れてしまいます。

たとえばロールタックというテクニックがありますね。タックという動作はラフィングなのに、なんでロールという名のアンヒールをつけるのか。その理由が僕はずっと分かりませんでした。ずっと不思議だったんです。答えはどこにも書いてません。

ある日、学生のロールタックを後ろから追いかけてて、突然この答えが分かりました。100%納得のいく答えです。これが分かってからはロールタックが得意になったし、微風のボートハンドリング全般が劇的に向上しました。

ツーマンのフネで微軽風のとき、2人が離れて乗るのもずっと不思議でした。なんで離れて乗るんだろう?でも確かに離れて乗った方が速いときがある。理由が分からない。ずっと考えてました。そしてこれも答えを手に入れたから、他のシチュエーションでも応用を利かせられるようになりました。

これらの疑問の答えをここで書くのは、みなさんの楽しみを奪うことになります。どこかでお会いした時に答え合わせをしましょう。

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