陽はまた昇る

カテゴリー SAILING

セーリング競技は終了しましたが、まだ熱戦が続いている希望郷いわて国体。その総合開会式で流された映像の中に宮古のヨットが出てきます。

この映像を見て、5年前の感動を思い出しました。

2011年3月11日。宮古湾でいつものように練習していた高校生セーラーたちは、異変を感じすぐにハーバーバックして避難。奇跡的に一人の怪我人もなく、津波の被害を免れることができました。でも残念ながらリアスハーバー宮古は津波によって壊滅的なダメージを受け、すべてのヨットを流失してしまいます。

僕はこのちょうど2週間前に、岩手県連主催のクリニックで子供たちにヨットを教えに行き、極寒の2月の宮古で海上練習する高校生たちに感銘を受けました。その年の8月に地元宮古で開催されるインターハイが、彼らの大きなモチベーションだとのこと。そうか、きっといい成績が期待できるだろうと太鼓判を押していました。

震災後、奇跡的に1艇のVSRが浜に打ち上げられているのが見つかり、その「シグナス」号を復活させて復興のシンボルにしようと宮古へ通いました。高校生たちはどうしてるのか尋ねると、ヨットが流され、ハーバーも壊れてしまったので休部状態だとのこと。あんなに練習頑張っていたのに・・・

何かできることはないかと模索していたある日、ザイク本社から支援物資としてジャケットが送られてきました。そうだ、これを高校生たちに着てもらおう。いまはヨットが無くても、海に出られなくても、揃いのセーリングジャケットを着ることで自分たちはセーラーなんだという矜持を持ち続けてくれるんじゃないか。

沈んだ夕陽が必ずまた昇るように、宮古にも必ずヨットが戻ってくる。その思いを赤い丸に込めたMiyakoとMiyashoのジャケットを20着用意し、4月30日、再び宮古を目指しました。折しもその日は琵琶湖の高校生たちが、支援物資としてFJを1艇寄贈するというタイミング。(このヨット寄贈についてはこちらをご参照ください)宮古高校の校庭に久しぶりに集まった部員たち。そこに遅れて到着した僕らは感動的な光景を目にすることになります。


Photo by ムラキノボル

震災から1ヶ月あまり、ヨットのことなんて考えるのも許されないんじゃないかと思いを封じ込めていた高校生たちに笑顔が戻りました。揃いのジャケットを着て、セールを揚げ、円陣を組んで声を上げる。彼らの日常が帰ってきたのです。また海に出られるんだという喜びが全身から溢れていました。

インターハイは秋田の由利本荘が代替開催地に選ばれ、彼らは片道5時間かけて練習に通ったそうです。2ヶ月後、同地で開かれた東北大会で宮古は堂々のトップ通過を果たしました。しかも選手はあのアイソタックジャケットを着てFJに乗っているじゃないですか。信じられません。ディンギーではきっと動きにくいはず。練習でも毎日着てると言ってました。そんなつもりじゃなかったんだけどw

あれから5年。いわて国体の会場で、先輩から受け継いだあのジャケットを着た高校生に出会いました。背中には思いを込めた赤い朝日が輝いていました。

震災復興に加えて、国体直前には台風10号の被害にも見舞われ、関係者の方々の苦労はいかばかりだったか。想像もできません。あらためて希望郷いわて国体の成功を心よりお祝いいたします。お疲れさまでした。

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