天気予報が急変したので、2オーバーナイトの予定を1ナイトに短縮したプランをジャンが作ってくれました。それでも300マイルと僕にとっては未経験の長さです。
20日の午後2時に出航。20ノットオーバーの強風の中、2ポイントリーフにステイスルを揚げ、ブレスト沖のウェイポイントを目指しました。見事に真上りです。
天気は悪い、気温も低い、波は悪い、こんなコンディションだとクラス40はスピードも上り角度も悪い。まさに拷問のようなファーストレグ。でも全然苦じゃないんだなこれが。
巨大なセールが生み出すパワーを、これまた巨大なバラストキールとウォーターバラストで推進力に変え、波を切り裂きながら進んでいく貴帆。人間一人の力ではどうにもならない自然の力を、物理法則でうまくコントロールして自分のものにする感覚は、ディンギーとはまた異なるものです。
そして夜。視覚に頼りがちな日中よりも五感が研ぎ澄まされ、波の音ひとつも昼間より大きく響きます。見上げれば雲は流れ、月もなく満点の星空。あーもう悔しいほど美しい。
日本にいれば愛する家族と暖かい我が家で眠れるのに、何を好き好んでこんなフランスの片田舎でオッサン2人が波をかぶっているのか。なかなか理解してもらえないかも知れません。僕にとっては無上の贅沢なんだけどw
結局午後6時にロリアンに戻るまで、28時間ほぼ休みなしでセーリングしてしまいました。後半はもうほとんどソロで北田さんを退屈させてしまったかも。楽しくて興奮してるんだからしょーがない。休みたくないし眠りたくないんです。
時間の都合でショートカットして220マイルほどしか走りませんでしたが、それでも僕にとっては最長航海でした。まだまだ元気だし、まだまだ走りたい。そのうちどこかで嫌になるときが来るのかな。うーん・・・いまのところその兆候は見当たらないですね。すっげー面白いぞ、クラス40。