ルイヴィトンカップのセミファイナルが始まりました。予想通り、進水間もないアルテミスはボートハンドリングに苦しみ、ルナロッサにいいようにやられています。2戦落としたので、あと2戦負けたら敗退決定です。
莫大な金と時間をかけて建造した2号艇「ビッグブルー」ですが、あと2レースでその役目を終えてしまうのでしょうか。だとしたら、あまりに勿体ない。なんとか一矢報いて欲しいところです。
ところでこのセミファイナルから、中継にオンボードの映像や音声が加わって、一気に臨場感が増したことに気がつきましたか?クルーたちの苦しそうな表情も見えるし、タクティシャンのコールも聞こえます。(AC45ワールドシリーズで出来ていたことが、なんでルイヴィトンカップでできないのか不思議でした)特にプレスタートでは、ヘリやボートからの映像だけよりも遥かに緊張感が伝わります。既に見飽きた感のあるエミレーツ対ルナロッサも、オンボード映像が加わればまた新鮮な驚きがありそうで楽しみです。
ヨットレースは変わりましたね。家にいながら、これだけ臨場感のあるレースを観戦できるなんて。しかも無料で。今回のACはルールやレースフォーマットなど、なにかと評判が悪いようですが、「見せるヨットレース」としての努力だけは評価されるべきだと思います。CGや合成を駆使して初心者にも状況が分かりやすくなったし、オンボード映像やレース直後のインタビューなど、選手の生の声まで届けられるようになりました。
この変化は少なからずディンギーのレースでも見られます。先月デンマークで行われた49erのヨーロッパ選手権のライブ中継は凄かった。
いままでは毎日レース後に編集された映像が流されるのが普通でしたが、この大会はライブで、しかもオンボードの映像まで。オリンピックと同じレベルの質の高い中継を見せてくれました。ピーター・バーリング師匠のボートハンドリングをこんなにつぶさに観察できるなんて、お宝モノです。
もちろん、国内でも「見せるヨットレース」への変化は徐々に見られます。今年の国体でも画期的な中継が予定されているそうです。ヨットレースといえば、現地に応援に行っても見られないのが当たり前だったことを考えると、隔世の感があります。エミレーツ対ルナロッサの初戦も、清水の民宿で見ましたからね。iPhoneで。セーリングのようなマイナー競技にとって、こうした技術の進歩は本当にありがたいことです。
ただし進化したのはあくまで伝える手段であり、肝心のレースがつまらなかったら、むしろ逆効果になりかねません。我々セーラーは、よりエキサイティングなレースをしなければ。子供たちが憧れて、大人たちも惹きつけるような熱いレースをね。