The Ultimate Sailing

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アメリカスカップはいよいよ佳境です。僕が帰った時点で、残りのレースはエミレーツが全部取るかと思うほどの差がありましたが、オラクルが意地を見せて、かなり追いついてきました。今日の第9レースはオラクルがスタートからリードを徐々に広げて圧勝。そして第10レースは、今大会、いやセーリング史上もっともエキサイティングなレースだったといっても過言ではありません。ご覧になっていない方は、どうか20分だけ時間を作って、下の動画の1:23:00あたりからの第10レースをフルに観てください。

第10レースは前半リードしたエミレーツにオラクルがアップウインドで追いつき、まったく同時に上ゲートを回るという激アツの展開。同時にジャイブし、40ノットオーバーで近づく両艇!結果フィニッシュは16秒差でエミレーツが先着。対戦成績は7勝3敗。スコアボード上では7対1となりました。

エミレーツがカップを奪うまであと2勝。スコアで圧倒的に優位なのは変わりませんが、走りの優位性はだいぶ無くなり、完全に乗り手の勝負になってきました。ホントに面白い。レース後のディーン・バーカーのコメントが秀逸です。

「今日のレースを観ても、つまらないと感じる人は、何か他のスポーツを観た方がいい」

僕もホントにそう思います。最速のセーラーが最速のボートで競う。セーリングをこれほど熱い、エクストリームスポーツに変えてくれた今回のACには尊敬と感謝の念を禁じ得ません。ラッセル・クーツが最初に、サンフランシスコの湾内で、ハイテクカタマランによる40ノットオーバーのマッチレースを標榜した時、誰もがそんなの実現不可能だと思いました。しかし、いま両チームが見せてくれているレースはまさにクーツの描いた理想のレースそのものです。

オラクルはルイヴィトンカップが開かれている間、ずっと2ボートトレーニングして来ましたが、フタを開けてみると、エミレーツに全然敵いませんでした。しかしレースを重ねれば重ねるほど、驚異的な学習能力で、相手の走りに肉薄しています。いわばこのアメリカスカップ本番こそが、究極の2ボートトレーニングなのです。

その証拠に、いまや両チームともクローズで30ノットを超えています。僕が超低空飛行と表現した、スキミングと呼ばれるこの海面スレスレのフォイリングが、序盤エミレーツの大きな武器でした。おそらくルイヴィトンカップでは温存していたのでしょう。しかしオフの日も毎日練習にあてたオラクルは、すぐにこのスキミングもマスターしたし、タックのスキルも同等レベルまで上げてきました。ピークではクローズで34ノットとか出してますからね。どんだけー!

こうなってくると、最短であと2レースで終わってしまうのがもったいない。最終戦まで行って欲しい。できることなら、このまま勝敗に関係なくずっとレースを続けて欲しいくらいです。

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