来たる2015年は日本のユース世代にとって激動の年です。7月に唐津で420ワールドが開かれ、8月には和歌山のインターハイで420が初採用(FJも併催)。さらに9月には同じく和歌山で国体が開かれ、ここでも420が採用されます。壮大な420イヤーになることは間違いありません。
日本ではまさに環境がこれからでき上がろうとするところですが、以前も書いたように、実は420は470よりも長い歴史を持ち、国際的にはもう成熟したクラスです。これまで55,000艇を越える数の420が登録されていて、他にもナンバー登録されないようなクラブ420も多数存在しています。ダブルハンドのディンギーとしては恐らく世界で最も普及しているでしょう。
それほどありふれた420ですが、だからこそメーカー同士の競争は非常に激しく、高品質で尚且つ価格も適正なメーカーだけが市場の原理で生き残っていると言えます。たとえば10年前は420のセールと言えばイタリアのオリンピックセールが圧倒的なシェアを握っていました。でも7-8年前からノースジャパンが徐々に勢力図を塗り替え、主要なレガッタをほとんど制しています。
これは今年のワールドに参加した男女合わせて195艇のデータです。ノースセールはメインセールで数えて88艇と全体の45%を越えるトップシェア。次点のオリンピックセールは59艇で30%となっています。つまりこの2社で四分の三を越える寡占状態だといえます。
艇体はブルーブルーが74艇でトップ。ナウティベラが67艇。ツィーゲルマイヤーが34艇。マッカイが10艇。ブルーブルーとナウティベラだけで72%と艇体もかなりの寡占状態です。
ちなみにマストはスーパースパーが136艇と圧倒的で全体の7割を占めます。残り3割はセルデン。
50年を越える長い歴史の中で、数多のメーカーの興亡があり、その結果が今日の寡占状態になっている訳です。いまワールドスタンダードを勝ち得ているメーカーの製品には夫々なんらかの優れた点がある。だからこの厳しい世界で生き残っている。データがそれを雄弁に語っています。
激動の420イヤーを控え、きっと高校ヨット部や県連の現場は大変な状況になっているとお察しします。以前も書きましたが、誰が乗っても走る魔法の420など存在しません。特にクラスルールの厳しい420では、乗り手の技量の差の方が遥かに大きい。だからこそユース世代に適正な艇種なんだとも言えます。
とはいえFJと勝手が違って、どこの何を買えばいいのか迷われることもあるでしょう。繰り返しますが、日本では新しくても、420は50年を越えて成熟しきったクラスです。すでに世界中のメーカー、セーラー、コーチが突き詰めまくっていて、その結果がこのデータなのです。これほど信頼できるものが他にあるでしょうか。
最も普及した艇種を採用し、これでやっと世界と同じ土俵に上がれます。日本セーリング界の長年の課題でした。この課題を解決したという最も望ましい証明方法は、来年以降のユース世代たちが輝かしい成績を残すことです。東京オリンピックの宝たちが世界でノビノビと活躍することを祈っています。