セーリング競技最終日。前日の鬱憤を晴らすかのようないい風が吹き、470女子、470男子、49er、そしてFXの順にメダルレースが行われました。
日本選手団の中で唯一メダルレースに残った470女子の吉田/吉岡組は抜きつ抜かれつの攻防の末、7位フィニッシュで総合5位入賞。メダル獲得こそなりませんでしたが、予選での2度のトップを含め、しっかり実力を発揮した大会だったといえるでしょう。
470男子はオーストラリアがギリシアチームとのマッチレースを制して銀メダル獲得。絶対王者ベルチャー/ライアンを破ったのは、あの恐ろしい青年ことシメ・ファンテラ/イゴール・マレニッチでした。母国クロアチアにとってセーリング競技初の金メダルです。あの小さな少年がついにここまで・・・
49erは既にピーター/ブレアが圧勝していましたが、メダルレースでドイツチームを逆転して銀メダルを確保したのはやはりネイサン/イアンでした。予想通り彼ら2チームがロンドンとは逆の形で金銀を分けました。ピーターとブレアはメダルレースもダントツ。実に2位と43点差ですよ。まったく異次元でしたね。
そして最も盛り上がったのがFXです。トップ4艇が2点差以内でメダルレースの着順勝ちという、ロンドンのときのラジアルと同じ状況。3回目のアップウインドで左から大きくゲインし、フィニッシュ僅か2秒差で逆転の金メダルを獲得したのは、地元ブラジルのグラエル/クンゼ!なんという出来すぎたドラマ!
手に汗握るすごい接戦でした。最後ジャイブをしてポートで前を切ってフィニッシュできるか、本当にギリギリの紙一重。そこで落ち着いて完璧なジャイブを決められるから金メダルが獲れるんですね。さすが英雄、トーベン・グラエルの娘、千両役者だわ〜
メダルの色が決まった瞬間、喜びを爆発させる2艇。勝ったブラジルは当然ですが、銀メダルのニュージーランドも喜んでるんですよね。日本人のメンタリティーとしては、あれだけ僅差で金メダルを逃したら落ち込みそうな気がしますが、驚くほど短時間に負けた現実を受け止めて、銀メダルが取れたことをポジティブに捉えている。少なくとも外からはそう見えます。
470男子のオーストラリアも、女子のニュージーランドも、49erのネイサンたちも、ロンドンの金メダリストでありながら、リオの銀メダルをきちんと自分たちのものとして受け入れて、喜んでいる。それが逆に彼らのメンタルの強さを表しているように思えます。
優勝以外はすべて負けだ、恥だという考え方は、不利な状況になった時に一気に崩してしまう脆さをはらみます。たとえ金メダルを逃すのが濃厚になっても最後までベストを尽くした彼らは、元金メダリストだからこそ銀メダルをとれたと考えることもできるのではないでしょうか。
折しも霊長類最強と呼ばれた、女子レスリングの吉田沙保里が決勝戦で敗れて4連覇を逃しました。そういう書き方をすれば、負けたというネガティブな捉え方になりますが、彼女は4つ目のメダルを獲得し、さらに彼女に憧れてレスリングを続けてきた選手たちが4つの金メダルを獲得した。そうポジティブに捉えることもできる訳です。
一発勝負のレスリングと、長丁場のセーリングを比較するのはナンセンスかも知れませんが、あまりにメダル至上主義な報道は、選手たちに余計なプレッシャーを与えるばかりです。オリンピックに行ったことのない僕からしたら、参加してる日本選手全員が勝者だし、羨ましい限りですよ。
吉田沙保里選手にはどうか胸を張って帰国して欲しい。そしてセーリングの選手たちも。それぞれベストを尽くしたんだから、堂々とドヤ顔で帰ってきてください。おつかれさま!