星のキレイな夜でした。風はそれほど落ちることなく6-10ノットの間を保ち、我々はラムラインを挟みながらの振れタックをしながら御前崎沖を通過します。
夜中の2時頃でしょうか。東の海面はるか前方に突如オレンジに光るジェネカーが現われました。ん?誰だ?なんでこんなところでジェネカー揚げるんだろう。しかもライトで照らしてるし。ん?なんだ?どんどん大きくなってきたぞ。
ワッチの4人で暫く正体が分からず、ようやく稲葉兄が叫びました。「月だ!」なんと細い細い三日月のテッペンが海面から出てきた、その先端がジェネカーに見えたのでした。信じられないほどキレイな月の出だったなぁ。他のレース艇もきっと見てたんじゃないかな。
そんな驚きもありながら徐々に東の空にかぎろひが立ち、周りの艇団に対しての自分たちの位置が再びハッキリしてきます。う〜ん、思ったほど良くないぞ・・・
夜の間に北東に回ったその艇団の中で南に位置していた我々は、集団の一番下でリフトを食らい、タックしたくても出来ない苦しい位置になってしまいました。回航するべき利島の前に、眼前に新島が迫ってきます。
「ギリギリまで新島に寄せれば島からの吹き下ろしが来たりしないかな」そんな甘い願望を持って新島に寄せると、逆に島を廻る潮の流れに吸い寄せられ、いよいよ利島に向けることすら困難なゾーンに入っちゃったみたい。やばいぞこれ、どうしよう?
「もう、新島回っちゃおうぜ」
誰が言い出したか、こんな逆張りの大博打。でもメンバー8人、誰もそのアイディアに水を差しません。だってその方が楽しそうなんだもんw
急遽バウ先を新島の南端に向けてベア。10マイルほど遠回りをしてでも新島を回って右に出す作戦に出たのでした。3時間ほどかけてようやく新島の向こうから利島が見えた時には、どんなに目を凝らしても、どこにもヨットが見えなくなりました。うわ〜やらかした。これはきっとやらかしたぞと。
そこからはもう気分はクルージングです。まぁどうせ負けるなら派手に負けた方がいいじゃん。新島の絶壁はキレイだったし、いい風吹いて楽しくセーリングして、何が不満なんだよ。右を回って負けたなら悔いはないさ。どうせなら大島も右をまわってやるぜ!
ホントに誰も見えなくなったので、きっとほとんどの艇団に置いていかれたんだろうと思ってました。実は利島の潮にやられて多くの艇団がのたうち回っていたとは知らずに。
利島だけでなく新島も大島も回航した僕らはだいぶ長い距離を走ったはずですが、カームや潮につかまる時間がなかったので、実はいい位置につけていました。そのことをようやく知ったのは、携帯の電波が入る相模湾に入った頃です。
「あれ?まだ5艇しかフィニッシュしてない、ひょっとして悪くないんじゃない?」
急にまた盛り上がった我が軍。10ノットの北東風を受けてコードゼロで驀進。スタートから38時間を経過した午前1時21分、参加51艇中の15位で江の島へフィニッシュしました。長かった〜〜〜〜
きっと成績はそんなに良くないけど、やっぱりこのチームは最高です。あそこで新島を回ろうって言って誰も拒否しないなんて。バカだなぁw だからラッキーレディーが好きなんだな。
地獄と天国を味わった今回のパールレース。つらくて苦しくて、最高に楽しい38時間でした。チームのみんなありがとう。また来年!