凛子がタイに行って1週間が過ぎました。一人で元気にやれてるかな?と心配になるけど、きっと毎日元気にセーリングしてるんでしょう。
凛子が生まれてまだ間もない2005年の秋、僕らはOPの商売を始めました。ツィーゲルマイヤーの470や420を輸入していたので、そのコンテナの空きスペースに入れられるOPは都合が良かったのです。最初に届いたピカピカのOPを展示しに、今はなき仙台・閖上ヨットハーバーで行われた全日本選手権に行きました。
このとき僕らはOP界のことなど何も知らないし、逆にOP界も僕らのことやツィーゲルマイヤーのことなど誰も知りません。でもこの展示をきっかけに少しずつ認知されるようになり、僕もクリニックを開いたり、世界選手権にコーチとして帯同したりと深く関わることで、OPビジネスは軌道に乗って行きました。
でも2009年に転機を迎えます。ツィーゲルマイヤーと供給元のポーランドの工場が契約を解消。ツィーゲルマイヤーブランドのOPの供給がストップしてしまったのです。すぐにポーランドへ飛び、工場の生産ラインなどを確認した上で、これなら問題ないと判断して彼らとの契約を結びました。ブルーブルーブランドに切り替えての再出発です。
ですが皮肉なことに浸透したブランド効果が逆に作用してしまい、まったく同じフネで価格が下がったにも関わらず、SZのロゴがないだけで販売が低下してしまいました。またこの頃モスにハマったこともあり、徐々にOPの販売への熱意が下がってしまったことも否めません。
会社の売上はザイクがどんどん伸びたことで、OPの分を補って余りありました。もうこのままOPも420も辞めてしまおう。そう考えたこともありました。
いまだから言えますが、OPのように厳格なルールのクラスで、道具による差なんてたかが知れてます。このフネに乗ればスピードが上がりますよとか、レースで勝てますよとか、そんなまやかしを言うのは気が進みませんでした。できるだけ言わなかったつもりだけど、そうとられてたとしても仕方ないなと。もう今日を境に、過去の自分も改めようと思います。
ぶっちゃけてしまえば、OPのレースの勝ち負けに道具の差なんて関係ありません。あったとしてもほんの誤差の範囲で、乗り手の技量の差の方が何十倍も何百倍も大きいです。青少年の育成のためのクラスとして、絶対にその方が正しい。クラスルールの狙い通りの運営がなされた、素晴らしいクラスですね。だから世界中でこんなに普及しているんだと思います。
420もそうです。以前も書きましたが、誰が乗っても走る魔法の420など存在しないのです。存在するべきじゃない。
それでも弊社はブルーブルーの販売を続けます。なぜならいいフネだから。いいフネとはどういう意味か?それは2009年に最初に輸入したJPN-3106から3115までの10艇を見れば分かります。10年以上が経過し、兄弟や後輩に乗り継がれ、それでも新艇と見分けがつかないほどキレイです。10年ですよ?赤ん坊だった凛子がOPに乗ってタイに行ってるんですよ?それだけの時間が過ぎても、全日本やNT選考会で使われて、子供たちに大事に乗ってもらってる。販売した側にとって、こんなに嬉しいことはありません。
ルールの緩いモスであれば、圧倒的に速い新艇が生まれることは可能です。またウェアやコーチボートにはルールがないので、ザイクやVSRのような革新が起こせます。
ブルーブルーが優れているのは、そんな革新的な部分ではありません。積層する際に丁寧に脱泡しているとか、きちんと温度管理をしてるとか、職人の地道な努力によるところが大きい。でもその成果は10年経ってハッキリと現れています。レース会場で3106から3115までのフネを見かけたら近づいてチェックしてみてください。とても10年落ちのフネには見えないはずです。
OPの商売に携わったことで、選手や親御さんたちと繋がれたのは我が社の大きな財産になりました。JPN-3112に乗っていた土居一斗と妹の愛実はリオ五輪の日本代表まで成長しました。東京2020ではその世代がまさに日本の主力になるでしょう。今後も日本のジュニア・ユースセーラーに、丈夫でいいフネを供給することで貢献していこうと思います。