seahorse-article-redoneザイクからアイソタックオーシャンとアイソタック2について分かりやすい説明が公開されたので日本語に翻訳してみます。

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「ザイクが創業した2004年当時は、サーフィン用だったり他のスポーツ用に開発されたネオプレン素材のスーツしか無かったんだ。嵩張ったり、重過ぎたり、堅かったりでとてもセーリングに適したものとは呼べなかった。だから僕らはネオプレン素材自体から見直すことにしたんだよ。セーラーにとって軽く、柔らかく、着心地の良い素材をね。」(ザイク商品開発部門責任者トム・フューシー)

セーリングに特化して開発されたウェットスーツは瞬く間にセーラーたちに受け入れられ、僅か数年の間にオリンピックや世界選手権の舞台でトップブランドの地位を築くに至りました。次の開発ターゲットとしてオーシャンギアに目を向けた時、トムは驚くべき事実に気がついたのです。

「世界一周レースなどの過酷な環境では、トップブランドと呼ばれるギアでも僅か1レグのうちに防水性能が落ちてしまうことが分かったんだ。そこで耐久性に重点を置いた素材を探そうとしたんだけど、驚いたことに防水耐久性を評価する基準すらなかったんだよ。防水性能といえば、どれだけの水圧に耐えられるかという指標ばかり。でもどんなにその数値が高くても、デッキや突起物に擦れるとすぐに漏れてしまう。つまりオーシャンセーリングほど過酷なコンディションに耐えられる素材なんてなかったんだ。」

そんな過酷なオーシャンセーリングを再現するため、トムはオリジナルの試験機を作りました。突起のついたボールをテスト生地で包み、エッジを尖らせたドラムで回転させて生地を痛めつけます。30分で1,800回もの衝撃を加えるのですが、これは14日間連続で外洋を走るに相当するテストだそうです。

「現在最も信頼されている防水透湿素材ですら、この30分のテストで防水性能は半分以下に落ちてしまう。60分ではもうまったく防水と呼べないレベルになってしまった。登山やスキーだったらこんなに耐久性を重視する必要はないかも知れないよ。きっとそれより透湿性を高めて蒸れを防ぐ方が大事だろう。でもオーシャンセーリングは違う。たった1つのピンホールからの水漏れが全てを台無しにしてしまうんだ。」

防水耐久性を飛躍的に高めるため、ザイクは日本のある企業と共同で素材開発に取り組み、マルチレイヤーメンブレンという新しいアイディアを実現しました。防水透湿のメンブレン(膜)を積層することで、透湿性を維持しながら、外洋のタフなコンディションにも耐え抜く耐久性を高めたのです。このマルチレイヤーメンブレンを採用したアイソタックオーシャンとアイソタック2は、外部機関の試験の結果、他社の4倍以上の防水耐久性が認められました。

「アイソタックオーシャンはザイクが考える究極のオーシャンギア。そしてアイソタック2はマルチレイヤーはそのままにアウター素材を変えることで、驚異的な軽さと柔らかさを実現できた。どちらも防水耐久性はこれまでのオーシャンギアとは比べ物にならないよ。」

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ここまで書いていながら、僕自身オーシャンセーリングの経験がないので想像を膨らませてるだけです。ディンギーなら自分で実感できるけど、外洋はなかなか経験できるものじゃありませんから。先日外洋レーサーの北田浩さんとお話ししたときに、僕らがまったく想像できない世界なんだとあらためて思い知らされました。

そこで一念発起。この週末、フランスに飛んで北田さんのクラス40に乗せてもらうことになりました。全身ザイクのオーシャンギアで商品テストをしてきます。乗ったこともないのに偉そうなこと言えませんからね。11月の北大西洋。寒いだろうな〜・・・

現地時刻6日の13時、ついにヴァンデグローブ2016がスタートしました。1艇ずつ桟橋を離れる瞬間は感動的です。彼らはこれから約3ヶ月、どこの港にも寄らず、誰の力も借りず、たった一人で世界を一周して帰ってきます。

既に艇団はイベリア半島のフィニステーレ岬を越え、ポルトガルの沖を南下しています。予想通りバンクポピュレールVIII、サンミシェル・ヴィアバック、ヒューゴ・ボスが抜け出してトップ艇団を形成しました。

来週には赤道を越え、再来週には喜望峰を越えてインド洋に入っているでしょう。前回の優勝艇マシフが持つ78日2時間16分40秒という記録は、恐らく今回塗り替えられると予想されています。75日くらいか、もう少し早いか。いずれにしろ1月の第4週あたりにはフィニッシュしてしまいます。単独とはいえ無寄港なので、ボルボオーシャンに比べてあっという間ですよね。

ところで前々から疑問だったけど、パスポートは持ってるのかな?一応出国手続きだけは必要な気がするけどw

主役は選手!

カテゴリー SAILING

海外と日本国内のヨットレースを比べた時、海上のレース運営にはほとんど違いがありません。今回の全日本OPにしても、世界のどこに見せても恥ずかしくない、素晴らしい海上運営だったと思います。ただ僕がいつも残念なのは表彰式。これはもう、海外と国内では全然違います。

そもそも表彰式の主役は誰か?断言させてください。勝者、そして敗者も含めた選手たちです。彼らを讃えるのが表彰式なんです。そしてその主役から、大会の運営に対して感謝を述べる。これがあるべき姿なのに、運営が選手たちに賞をあげているという構図の表彰式が多過ぎます。

まず成績発表が間違ってる。だって大会の一番盛り上がるクライマックスですよ?なんでいきなり優勝から発表するんですか!んもー、逆ですよ逆!!

一番分かりやすい模範はオリンピックです。金メダルから発表される表彰式なんか見たことないはず。銅メダリストが最初に紹介されて壇上に上がり、次に銀メダリストは銅メダリストと握手してから登壇し、最後に金メダリストが2人のメダリストとの健闘を讃えあいながら一番高い表彰台に上がる。他の選手たちはこの美しい姿を見て、ああいつか自分たちもあそこに立ちたいと願うんです。

それだけではありません。勝者を最後に発表するのは、惜しくも敗れた他の入賞者たちのためでもあります。下位の入賞者から発表すれば、それぞれにベストを尽くした彼らも喜びを表現しやすい。なぜならその時点で一番上位だから。でも最初に勝者を発表してしまうと、どうしても見劣りしてしまうので徐々にトーンダウンして、せっかくの入賞も色褪せたイメージになってしまいます。

だからどうか順位発表は逆にしてください。お願いします。そして主役である選手たちを壇上に上げてください。プレゼンターが壇上からで選手は壇の下、しかも他の選手に背中を向けて賞をもらうなんて止めて欲しい。みんなが見たいのは選手たちの顔なんです!プレゼンターの顔じゃありません!

かつて全日本470の表彰式で似たような経験をしました。他の選手たちに背を向けて賞を貰い、その後なんと「回れ右」と言われ、「礼」をさせられました。なんで勝者がこんな扱いを受けなければならんのか。せっかくのレースの感動や興奮が台無しです。

表彰式を軽視してはいけません。表彰式は勝者を讃えるだけでなく、次の世代のモチベーションを高めるためのとても重要なセレモニーなのです。勝者が号令で礼をさせられるなんて、根本的に間違ってるとしか言いようがない。優勝してもあの程度なのかってガッカリされるだけですよ。

選手たちを地べたに座らせるのも良くない。何のためにステージがあるんですか。表彰台があるんですか。敗者は地べたから見上げなさい?違います。勝者はみんなから見えるくらい高いところに立つべきなんです。

いろいろと事情もあるとは思います。会場のサイズや予算の都合もあるでしょう。レース運営に労力を割き過ぎて、そこまで考えが回らないのが実情かも知れません。でも最後の表彰式次第で、その大会の印象は大きく変わるんです。思ってる以上に。

葉山モスワールドの表彰式は素晴らしかった。これだけは胸を張って言えます。式典のプログラムも、進行も、会場の設えも、これまでの経験を踏まえて徹底的にこだわりました。これから国際大会の開催も増えていくので、どうか表彰式にはこだわって欲しいと切に願います。もしアドバイスが必要であれば個別にご連絡ください。喜んでお手伝いします。

可能性は無限大

カテゴリー SAILING

img_7685OP全日本最終日。無風のためしばらく陸上待機が続きましたが、10時40分に出艇し、徐々に吹き上がってくる風の中、13時30分の制限一杯まで3レースを実施しました。

凛子はスタートから果敢に攻める姿勢を見せ、まるで別人のようでした。残念ながらアウターに引っかかったりポートスターボでケースを起こしたりで結果には繋がりませんでしたが、レースを戦う気持ちが出てきたことは評価できます。最終成績は51位。選考会の順位には届きませんでした。でも半分に入れれば御の字と思っていたので、100点満点の素晴らしい成績です。

しょーもない海上計測のペナルティーさえなければ順位はもっと良かったはず。本当に申し訳ないことをしました。せめてもの罪滅ぼしに、これからは娘ともっと向き合って、上手くなりたいという欲求を満たしてあげたいと思います。

葉山ジュニアの大澤雄帆は苦手な強風域でも歯を食いしばってハイクアウトし、総合2位、小学生1位という栄冠に輝きました。そして青山知央も総合7位、女子3位。金子道之介も29位と選考会に残り、シングルに2艇、選考会に3艇というかつてない活躍に湧いた全日本でした。正直言って、想定外の出来過ぎな成績です。彼らのフネを運んだことすら誇らしいw

子供の可能性を大人が枠に嵌めてはいけないんですね。子供たちは大人の想像を超えた可能性を秘めています。それを痛感した大会でした。素晴らしい大会を運営してくださった岡村レース委員長はじめ運営の方々、ありがとうございました。あ〜面白かった。よし葉山に帰ってお祝いだ!

OP全日本2日目。風向風速ともに変化の激しいコンディションで4レースが行われました。1レース目の1上を35番くらいで回るのを見ながら、「あーもー、まぐれでもいいからシングルでも取ってくれんかな。そしたらメチャ盛り上がるのに」とぼやいてたんです。するとフィニッシュがなんと7位!チョービックリ!

しかも2レース目は1上を8位で回り、フィニッシュがなななななんと!2位!!!一緒にRIBに乗ってるワンセール大澤さんの息子、雄帆とワンツーフィニッシュ!!!ぶったまげました。まさかこんなことが起こるなんて。しかも全日本で!

雄帆は今日の4レースを2-1-3-1と驚異的な安定感でまとめ、暫定トップに立っちゃいました。子供って突然覚醒しますよね。他も知央が13位、道之介が19位、そして凛子が40位。ゆうゆうゴールドフリートに残るどころか、なんと選考会に残る位置につけています。まったく想定外の出来事に親の方が慌てふためいています。

凛子はせっかく2位で入ったレース、初めての海上計測を受けて、バウラインの結び方で10%のペナルティーを受けてしまいました。これは僕の責任です。ホント凛子に申し訳なくて、僕はずっとふさいでいました。そのことを凛子に謝ったら、「うん、いいよ。大丈夫。」って。もう泣きそう。いい子に育ってくれたなぁ。

いや〜それにしても今日はすごい一日だった。分かんないもんだな〜、子供の可能性って読み切れないわ。明日はいよいよ最終日。ゴールドフリートのハイレベルな中で3レース。クラブ初の全日本チャンプが誕生するか?そして凛子がまさかの選考会切符を手に入れるか?親の方がドキドキして眠れなくなりそうですw

OP全日本2016

カテゴリー SAILING

全国の予選を勝ち抜いてきた140艇と、海外からの参加5艇を含めた合計145艇のOPが小戸ヨットハーバーに集まりました。今日から3日間で全9レース。凛子の目標は半分以上の成績でゴールドフリートに残ること。それができれば両親は大満足です。

初日の今日は振れ回る北西の軽風で、彼女が最も苦手とするコンディションでした。苦しいところをなんとか耐えて、29-49の総合75位。惜しくもゴールド圏外ですが、初日にしては上出来。葉山ジュニアは他のメンバーも良く走ってるので、全体的に雰囲気がいいです。このムードに乗って明日も頑張ろう。

フェリーは予定通り朝5時半に到着し、7時半に無事小戸ヨットハーバー到着。子供たちと合流してOPとRIBを下ろしたら、つなぎに着替えてお仕事開始です。今日は運営で使うVSRのチューブ修理をする日なのです。しかも3艇も。

最後の3艇目の作業を終えたのは陽も暮れた午後6時過ぎ。10時間ぶっ続けでチューブと格闘して疲れ果てました・・・でもこれで明日から安心して運営に使っていただくことができます。明日からは保護者としてレースを楽しもう。凛子がんばれ!

西へ

カテゴリー PRIVATE

img_766214回目の結婚記念日だというのに、朝からひとりハイエースで西へ向かって走っています。葉山ジュニアのRIBを牽引し、その上にOP1艇、カートップ2艇、車内に3艇と合計6艇を一気に運べるのはハイエースならでは。

夕方のフェリーで門司に渡り、明日から小戸で始まるOP全日本に参加します。家族総出で凛子の応援です!頑張れ〜

ワスプでロングダウンウインドに挑むチャレンジの動画。何度も派手にノーズダイブしながら、なんとか30マイル先の目的地に到着したそうです。帰りはラバーに積んだのかな?まー30マイルの上りをワスプで走りたくないのは分かるなw

波の中でのフォイリングはテクニックも大事ですが、まずなにより勇気が必要です。Don’t think, feel! 考えてたら遅れるし、怖いと感じたらもう負け。アグレッシブなステアリングはできません。限界を超えたところに正解があると思った方がいい。

ワスプは通常のモスと違ってステーが無いから、ノーズダイブした時でも怪我しにくいのが魅力です。もー何度シュラウドに突っ込んできたか。歯を折ったとか指を折ったとか何針縫ったとか・・・モス乗りなら誰しもシュラウドで痛い思いをしています。でもワスプなら女性や子供、また高齢の方にも安心して試乗させられるんです。もうこんなチャレンジをする人が出るくらいだから、フォイリングの裾野を広げるのにきっと大きな役割を果たしてくれるんじゃないでしょうか。

Foiling 2020?

カテゴリー SAILING

先月半ばの話になりますが、国際ナクラ17協会はEメールを使った投票で会員の総意を諮り、僅かな差ながらフルフォイリングクラスへの移行が採択されました。その時のナクラヨーロッパの提出資料がこちらです。要約すると、

  1. 既存の艇については、アップグレードキットでフォイリング可能になる。7,900ユーロ。
  2. ハルを含め、新しくなったプラットフォームだけを購入可能。14,500ユーロ。(100セットのみ)
  3. フルコンプリートセットの新価格は24,250ユーロ。

2番のプラットフォームを購入した場合、古いプラットフォームにアルミマストを立ててビギナー用の艇に再利用することも可能です。このクラブキットは850ユーロ。ナクラヨーロッパの本気を感じさせる、かなり思い切った価格設定です。とはいえWSとIOCの承認が下りるかはまだ分かりません。

っていうか、君たち夏の江の島がどんな波か知ってるのかね?そんな装備で大丈夫か?死ぬよ?

fpessentialなんて傍観していたら、フライングファントムからもエッセンシャルという名の新型が発表されました。ウイング付いてるなんて、パッと見てモスかと思いましたよ。こっちも新しいナクラのようにZボードとLラダーの4本足で飛ぶ仕様です。

ハルはカーボンでなくGRP、マストはアルミ。セールはポリエステル。むむむ?値段は未発表だけど、これは明らかにオリンピック狙ってきてないか?

舞台裏でどんな駆け引きが行われているのか知りませんが、とにかく艇種を早く決めてあげて欲しい。それだけです。東京を目指す選手たちが可哀想でなりません。

オリンピックのカタマランが飛ぼうが飛ぶまいが、一般のスポーツファンには大差ないし、それがナクラかファントムかなんて、もっとどうでもいいはず。アスリートファーストなんて言葉が虚しく感じる、4年ごとのドタバタ劇。いい加減終わりにしましょうよ。

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